2019年11月29日金曜日

決算!忠臣蔵

2019年11月29日 決算!忠臣蔵☆☆☆☆☆

ここ数年,奇妙な時代劇が多く作られて,どれもが面白かった.「超高速参勤交代」とか「引っ越し大名」とか,どれも感動して泣かせる映画ながら,徹底的にコメディでした.「泣くな!笑え!」みたいな.この作品も「忠臣蔵」をお金の面からだけで考察した「泣くな!笑え!」の作品です.
侍を気取る「番方」と金勘定を受け持つ「役方」が対立しながらも「討ち入り」を成功させるまで.
松竹と吉本興業のタイアップ作品だけあって,吉本の芸人がたくさん出てますが,皆,いい仕事してます.岡村隆史,大石内蔵助の幼馴染であり,金勘定で対立しながらも,身代りとなって死んでしまう.涙涙.
た~くさんの俳優さんが出ています.浅野内匠頭の切腹で介錯するのが千葉雄大だったり(わずか数カット)贅沢な使い方してます.
語りは内匠頭未亡人の瑤泉院,自分の化粧料を好き放題使われて怒髪天を衝きます.
御家断絶を「会社倒産」,役方を「経営陣」とか現代語の注釈を入れて,金銭はすべて現在の貨幣価値に直して,「デスノート」の「死神の目」のように「江戸までの旅費36万円」とか「蕎麦一杯480円」とか表記されます.
討ち入りが「火消し装束」だったのは「火消しの赤穂」と言われた「火消しに長けた赤穂藩」の武士なら誰でも持っている「火消し装束」だから「新規発注しなくて良い」から.
で,「討ち入り」シーンは全く省略.
内蔵助に文句のある瑤泉院,予定外だったのは,討ち入り後,江戸では志士が英雄視され,自分が泉岳寺の内蔵助の墓の目の前に葬られたこと.
途中罵り合いのシーンで「ピー」が入りまくったり,とにかく楽しい映画です.おすすめです.

2019年11月25日月曜日

天国と地獄☆☆☆☆☆

2019年11月24日 二期会オペラ 天国と地獄☆☆☆☆☆ 於 日生劇場


オルフェ・・・・・・・・・山本耕平
ユリディス・・・・・・・・高橋 維
プルート・・・・・・・・・渡邊公威
ジュピター・・・・・・・・三戸大久
指揮・・・・・・・・・・・大植英次
演奏・・・・・・・・・・・東京フィルハーモニー交響楽団

いやー面白かった.ただ,あたくしにとってこのオペレッタは,なかにし礼演出,「立川清登,島田祐子」が基本だから,生半可な歌手が歌っても楽しめないの.
でも,このプロダクションはすごい.日本語も熟れているし,ユーリディスの超高音コロラトゥーラも正確だし,良かったです.
なかにし礼の時代から30年以上たってるから「キモイ」とか「ムカつく」みたいな「現代語」も合ってるし,あおり運転のトラブルも今風だし.
もし,立川清登,島田祐子,斉藤昌子級の「歌える役者」がいたら,もっと面白くなると思う.星野淳をなぜ使わない!
再評価が続くオッフェンバック,今回の序曲はいわゆるポプリ.仕立て上げたのも弟子でしょう.(ギルバート・サリバンと同じ)
なんだかんだ言っても楽しかったわ.しばらくこのプロダクションで見たいわ.

2019年11月23日土曜日

眠りの森の美女☆☆☆☆

ミハイロフスキー劇場バレエ 眠りの森の美女☆☆☆☆ 於 東京文化会館大ホール

オーロラ・・・・・・・アナスタシア・ソボレワ
デジレ王子・・・・・・ヴィクトル・レベデフ
リラの精・・・・・・・アンドレア・ラザコヴァ
カラボス・・・・・・・ファルフ・ルジマトフ
フロリナ王女・・・・・サビーナ・ヤパーロワ
青い鳥・・・・・・・・イワン・ザイツェフ
ルビー・・・・・・・・田中美波
ゴールド・・・・・・・ジュリアン・マッケイ
指揮・・・・・・・・・パーヴェル・ソローキン
演奏・・・・・・・・・シアターオーケストラトーキョー

ペレンちゃんが降りただけでも萎えなのですが,大好きな王子様レベデフなので.
これはもう「プティパ」ではなく,「ナチョ・ドゥアト」の「眠り」です.もちろんプティパをなぞっている部分は多いけど,踊りのスタイルがドゥアトなのよ.
プロローグ,いろいろな「精」が出てくるけど,アテンドしている男子の一人がなんとシヴァコフ.
カラボスが出てきたら大拍手!!!動きも激しく「たっぷり」
一幕はいきなりガーランドワルツでえ始まるもガーランド無し,ローズアダージョは最初のバランス無し,花をもぎ取るのも無し.最後のバランスだけあるも,ロシアだけにショボイ.

二幕,あのきれいな間奏曲も無し.まあ,普通かな?
終幕,色々なキャラクテールが出てくるけど,実際に踊るのは.

  • 宝石 マッケイ様,日本人,田中美波出演
  • 青い鳥
  • 赤頭巾
でPDDへ,もちろんロシアだからFish diveは一回も無い.
この劇場の以前の版は,しつこいほどキャラクテールが出てきて,上演時間も3時間超えだったような.それが好きだったのだけど.
その後のマズルカは省略してアポテオーズへ.
衣装が100年ずれているのでアポテオーズも違和感.
そもそもはバロックで始まり100年後のロココで終わるのが定石.
だから最後のアポテオーズも「アンリ4世万歳」というロココ時代の曲の編曲で,同じ時代を扱ったロッシーニの「ランスへの旅」にも使われてます.
今回の版は「ロココで始まりバッスルで終わる」から終幕の衣装は19世紀後半で,妙に新しいのよ.そこにロココの音楽が流れてもねえ.
で,じゃ嫌いなの?と問われれば「好きです」
もともとコンテ嫌いな私が数少ない愛するコンテの振付家がドゥアトでしたから.
日本人の田中美波さん,ロシア人に混ざっても負けない立端とプロポーション.きれいでした.
このバレエ団としばしば共演した草刈タミー,日本人としてはプロポーション最高でしたが,このバレエ団に混ざると「顔デカ.足短か」だったのを思い出します.

さて,カーテンコール,一番の拍手はルジです.
ルジの最盛期(と言っても私が知ってるルジはすでにマリインスキーではほとんど踊らず,専らマールイで踊ってました)
当時「ルジ婆」と呼ばれるルジファンのババア集団がいて,ルジの公演に大量の花を持って行き,舞台の上に数トンの花が置かれることもしばしば.
あたくしにとっても,バレエの楽しさを教えてくれたのはルジとその仲間だから,今でもルジの踊りが見られるのは至福のとき.
改めてルジありがとう


2019年11月22日金曜日

パリの炎☆☆☆☆

2019年11月21日ミハイロフスキー劇場バレエ パリの炎☆☆☆☆
於 東京文化会館大ホール

ジャンヌ・・・・・・・オクサーナ・ボンダレワ
フィリップ・・・・・・ジュリアン・マッケイ
ミレイユ・自由・・・・イリーナ・ペレン
ミストラル・・・・・・ヴィクトル・レベデフ
キューピッド・・・・・サビーナ・ヤパーロワ
候爵・・・・・・・・・ミハイル・シヴァコフ
指揮・・・・・・・・・パーヴェル・ソローキン
演奏・・・・・・・・・シアターオーケストラトーキョー

マールイも,昔は毎年2回ツアーを行ってたけど,コーセーが撤退したかなのか,光藍社の都合なのか,最近は数年に一度の来日になってしまいました.
ボリショイで見たときにはあまり感動しなかった作品なんだけどけど,今回は楽しめました.ストーリーはベルカントオペラ並みに大したことありませんが,アサフィエフの音楽とワイノーネンの振り付けが面白いです.
レベデフは王子様だし,初来日,希望の星マッケイも弾けているし(顔ちっちゃい),久しぶりのシヴァコフも健在で.
ガヤには日本人も多数.オケも昔はひどい演奏もあったけど,今回はきちんと演奏していた.
ペレンちゃんはすごい!オーラが全く違う.嘗てのシェスタコワに勝るとも劣らないオーラ.
土曜日に「眠り」を見ますが,こちらも楽しみ.
芸監のナチョ・ドゥアトが最近バヤを改訂したらしいですが,こちらも見たい.ロシアでは珍しく寺院崩壊までやってくれるので.

追記
ジュリアン・マッケイは日本公演後マールイを退団.ナチョのバヤはYoutubeに上がってますが,寺院崩壊が無い演出でした.

2019年11月20日水曜日

メトライブ トゥーランドット☆☆☆☆☆

2019年11月17日トゥーランドット☆☆☆☆☆


トゥーランドット・・・・・・・クリスティーン・ガーキー
カラフ・・・・・・・・・・・・ユシフ・エイヴァゾフ
リュー・・・・・・・・・・・・エレオノーラ・ブラット
ティムール・・・・・・・・・・ジェイムズ・モリス
指揮・・・・・・・・・・・・・ヤニック・ネゼ=セガン
演奏・・・・・・・・・・・・・メトロポリタン歌劇場管弦楽団

このプロダクションを始めてみたのは初演時のVHS.キャストはエヴァ・マルトンとドミンゴだったか.確か謎解きの高音でドミンゴの声がひっくり返ったままだった.(後に修正されたらしい)
で,今になってみると.やはりゼフィレッリの演出はすごい.二幕の謎解き場面のトゥーランドットの衣装が,初演時の京劇風からもう少し現実に近いデザインに変わっていた.
公演自体も素晴らしかったけど,幕間のインタビューと,今年亡くなったゼフィレッリ,ジェシー・ノーマンの生前の映像が流れて感激しました.

ドン・パスクァーレ ☆☆☆☆

2019年11月16日 ドン・パスクァーレ☆☆☆☆ 於新国立劇場オペラパレス

ドン・パスクァーレ・・・・・・・・・ロベルト・スカンディウィッツィ
ノリーナ・・・・・・・・・・・・・・ハスミック・トロシャン
エルネスト・・・・・・・・・・・・・マキシム・ミロノフ
マラテスタ・・・・・・・・・・・・・ビアジオ・ピーツーティ
指揮・・・・・・・・・・・・・・・・コッラード・ロヴァーリス
演奏・・・・・・・・・・・・・・・・東京フィルハーモニー交響楽団

で,オペラ前のランチは,相変わらず築地食堂源ちゃんの「金華さば煮魚定食」
美味しい!

歌手はみんなよく歌ってるし,こじんまりしている割には複雑な装置も面白かった.敷いて言えば「老人弄り」な内容なのでスカッとしないだけ.
合唱もあまり出番はないが,何しろ世界一のレベルと断言していい合唱団,歌はもちろんのこと,ドリフが入った終幕の演技も見事でした.
歌手を選ぶだろうことは予想されるけど,この装置ならコンパクトなのでレパートリー化は十分可能でしょう.
それにしても「お金があれば「愛によく似た物」が買えるのよ.
あと,オペラシティではこんな催しもやってました.
楽しかったです.おすすめ.

2019年11月13日水曜日

ひとよ☆☆☆

2019年11月13日 ひとよ☆☆☆

DV父親に虐待されていた三兄妹.母親は,子供を守るために父親を殺す.
そして15年後,その母親が戻る.
で,三兄妹,物の見事に底辺になってました.

  • 長男,吃音,マザコン,優柔不断,DVが遺伝.妻子あり(別居中)
  • 次男,エロ雑誌の記者
  • 長女,お水,だめんず・うぉ~か~
母親の事件以来「殺人犯の子供」と誹謗中傷を受け続けたというけど,「どこの田舎の話かよ」と思ったら,茨城は大洗が設定.あそこは東北の文化圏だから,ありうるかも.
東京なら「噂話」位はするかもしれないけど,中傷ビラを張ったりみたいな面倒なことはしないでしょ.
それに「DV父親から守るための殺人」ならむしろ名誉なこと.
まー,絵に書いたような陳腐な定型通りの展開.

もう一人,足を洗ったヤクザとその息子の話も同じように「親によって人生を狂わされた子供」として出てくるのに,尻窄みでいつの間にか消えているし.

三人の兄妹の底辺を表現するため,三人ともタバコを吸う設定なのが「わかるぅ」でした.

MEGUMIが「自分の妻子ではなく親兄弟だけを家族と考える」亭主にイライラしながらも関係を修復したい奥さん役を熱演してました.
ただね,この三兄弟見てると「虐待はされる側にも原因がある」と思ってしまうの.

2019年11月4日月曜日

閉鎖病棟ーそれぞれの朝☆☆☆

2019年11月4日 閉鎖病棟ーそれぞれの朝

原作が1994年ということで,今とは状況は違うと思うけど,閉鎖病棟で患者をこんなに自由に行動させるのかしら?覚醒剤ジャンキーに金属バット持たせたり,統失を街中に放牧したり,敷地内で暴行,強姦,殺人が起こったりとか,あまりにも自由過ぎる.
知り合いの看護婦さんが,実習で都立松沢病院に行ったことがあるというので話聞いたことがありますが,「女子は絶対に入ってはいけない場所」があったり,止む終えない身体拘束とか,もっとすごい話を聞いていたから,「これは閉鎖病棟ではないのでは?」と思ってしまいます.
ま,夢野久作の時代から解放療法というのはあったのですが.
ちなみに松沢病院は「強制不妊手術」が問題になった時「当時,都立松沢病院に入院中の」と聞いただけで「あ,それは仕方ない」ぐらいのブランド力を持った病院です.
精神病院を扱った映画には「まぼろしの市街戦」とか「マルキ・ド・サドの演出のもとシャラントン精神病院患者によって演じられたジャン・ポール・マラーの迫害と暗殺」と言った名作があるのだけど,それとは違って一見ドキュメンタリー風だからね,この映画は.
これが,アメリカ映画だ「ロンリー・ハート」みたいに狂人同士が傷舐め合って「あたしたち気狂いじゃないよね」系の胸糞悪い映画になるのよね.