2013年5月14日 セデック・バレ☆☆☆☆☆
第一部 太陽旗
第二部 虹の橋
合わせて上演時間四時間半という長編です.都区内ではユーロスペースだけ,それも結構混んでいるらしい.ん〜〜〜と思ったら,最近キネ旬が柏に開いたTKPシアター柏で上演がはじまり,結構空いているらしいとのこと.柏なら,渋谷と同じぐらいの時間で着くので,行ってきました.ええ,空いていました.20人ほど?でも,田舎の映画館としては上出来です.
1930年,日本統治下の台湾で原住民(台湾の言葉では「原住民」が正式です),生蕃,いわゆる高砂族と称される部族の一つセデック族が蜂起し,日本人を皆殺しにした事件とその顛末です.
台湾の「中国人」は,王朝が「清」になり,満人が支配者になったことを嫌って台湾に移り住んだもの.それ以前から住んでいた原住民はオーストロネシア語系の言語を話し刺青と出草と呼ばれる首狩りの風習を持つ狩猟民族.ポリネシアの人々もこの末裔ではないかと考えられています.
セデック族では首狩りをすると一人前の男とみなされ額と唇の下に刺青をする.その印を持って祖先の国,死者の国に入る資格ができると考えられている.
さて,日本人に支配され屈辱的に扱われていたセデック族の社(部落のような意味)で,些細なことから日本人とセデック族とのトラブルがあり,セデック族の頭目が面子を潰される.そして,日本人学校の運動会の日を狙って,頭目モーナ・ルダオに率いられたセデックの戦士が日本人を老若男女問わず皆殺しにする.
そして,日本軍の報復が始まるが,的は猿のごとく野山をかけずり回る蕃族,日本軍はことごとく返り討ちに遭う.セデックの男たちはゲリラ戦で徹底抗戦,さらに死を恐れない.むしろ戦士として戦い,虹の橋を渡って祖先の国に行きたいぐらい「靖国で会おう」と同じです.男たちの覚悟を感じ,女たちは子供を道連れに自決.セデック族の創世神話では,人間は木から生まれたので,徹底抗戦か,巨木の下での縊死が名誉ある死であった.
日本軍は蜂起に参加しなかった社のセデック族を「味方蕃」として組み込み,ゲリラ戦も開始,重火器,毒ガス弾まで使う.
日本軍は「投降すれば命は保証する」というビラを撒くが,従う物は少ない.
モーナ・ルダオは長男に後を託して失踪.長男たちは縊死する.そして,数年後モーナ・ルダオの遺体が発見された.
上演時間の半分が凄まじい戦闘シーンで,日本軍がコケにされ,殺され,首級を取られます.行軍する日本軍のシーン,カメラが引くと,まわりの木の枝に無数のセデック族が銃や弓を弾いて狙っているなど,映像的にも美しい,怖いシーンがたくさんあります.セデックの民謡が随所に流れて効果的です.
これだけ日本人が殺されても,むしろセデック族に肩入れしてしまうのはなぜでしょう?相手がチャンコロやチョンであったら「不愉快だ」で映画館を出てしまいそうな作品なのに,なぜかセデック族は嫌いになれません.
霧社事件は,台湾でも最近まで台湾の歴史教科書に殆ど記述がなかった事件らしいです.
あたくしも事前にwiki等で予習はしましたが,名前や地名が複雑だとかで,イマイチ飲み込めなかったのですが,映像の力は凄い.
安藤政信以下多数の日本人俳優が出ています.どの役者も美しすぎる.リアリティが無くなるほど美系揃いです(ただし男に限る)台湾側もほぼ全て少数民族の血を弾いた役者が出ています.ビビアン・スーもタイヤル族の血を引いていますから.同じ台湾出身でも彼女が親日でインリンが反日なのは,インリンは外省人のいわゆるチャンコロだからです.
味方番や高砂義勇軍は靖国に祀られています.全ての犠牲者に合掌.
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