2016年3月23日水曜日

日本の音楽ホール

日比谷公会堂が閉館になる.
いくら老いぼれのあたくしでも,日比谷公会堂で音楽を聞く機会はなかったし,まして色物なんか.
日本の伝統文化に歌舞伎や人形浄瑠璃があるけど,これらの劇場は「南に向かって建てられ」「日の出から日没までの営業」観客は開場と同時に劇場に入り,幕間や観劇中でも「弁当」や「誂え物」を食べ.桟敷席の欄干は,料理屋が岡持ち片手に飛び歩くのが「粋で格好良い」とされた.下手すりゃ座席で煮炊きまでした.落語の「鍋草履」の世界.
金持ちは芝居茶屋に部屋を借り,幕間に休憩に行ったり,着替えたりした.朝から贔屓の役者の出番まで待つからこそ,贔屓が出てきた時に「待ってました!たっぷり!」と声を掛けた.
この文化を平成の世まで伝えてくれたのが,いつも言うように,名古屋の「スーパー一座」でした.年末の歌舞伎公演の時は大須演芸場の椅子席を外し,畳敷きの「桟敷席」に仕立て,弁当と飲み物片手に楽しむ形式でした.
さて,西洋文化が入ってきて,日本もオーケストラだ,オペラだと始まった.
如何せん,文化の基礎が歌舞伎浄瑠璃.舞台は横長のシネマスコープ.立端がない,袖がない.ホワイエには飲食コーナーだけでなく,土産物屋,屋台コーナーまであるのが普通.帝劇も日生劇場もこのパターン.
この形式の最後の劇場がNHKホール.今となっては場違いな土産物コーナーや即売コーナーもあった.
上野の東京文化会館だけは開館時から「クラシックの色物専門劇場」としてほぼ四角のプロセニアムを持つ劇場だった.(NHKホールやサントリーホール,オーチャードホールができるまでは色物は少数派だったのだけど)
バブル期の「無目的ホール」はいわゆる建物行政で,「入れ物作りました,後は好きにやって」なのだけど,作ったのはホール部分だけ.色物を上演するには最低でも主舞台と同じ大きさの脇舞台が必要だし,それなりの楽屋も設備も必要.
そういうところまで考えられて作られ始めたのが多面舞台を有するホール.作られ始めた21世紀をまたぐ頃.
ま,ヨーロッパでレパートリー公演する劇場でも,パリのガルニエ宮,ミュンヘンのバイエルンシュターツオーパー,ウィーンのシュターツオーパーなんかは一面舞台のようなものなので,複雑な場面変更が無い演出だったりする.
パリのバスチーユは9面舞台で,なおかつ遮音壁で遮断可能なため,オペラ上演中もフルのリハーサルができるとか.
今月のDIME誌に「国内で初めてドリンクコーナーを設けた音楽ホールサントリーホール」が出てたけど「ビュッフェという意味では初めてかも.それまでの劇場は明治座やら三越劇場やら「幕間にガッツリ食事する食堂併設」が普通だったから.
バブル以降のホールには普通にあります.
欧州のホール,ドイツ系は「フルサービスの黒服がいるレストランコーナー併設」だけど,フランス系は「簡単なワインコーナーだけ」が普通です.


新国が(主に)主演者側から歓迎されるホールなのは

  • 楽屋の数,洗濯機の数,シャワーの数が,出演者の多い色物公演でも十分なぐらい揃っている.
  • 楽屋から舞台の動線が良い.どの劇場へも単一の経路でたどり着ける
  • 舞台袖にも着替部屋やレッスン用のバーが用意され,早変わりにも対応可能
  • 舞台上に高さ5cmの「バレエ床」を貼っても,「舞台面を5cm下げることに依って段差解消」のようなハイテク舞台機構.
逆に評判が悪いのは,渋谷の百貨店併設ホールです.上記の正反対だからだそうで.

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