白鳥湖に限らず,二十世紀初頭までの著名なバレエは全てマリウス・プティパが振り付けたと言っても過言ではない.
プティパは,作曲を依頼するに当たって細かく指示を出したらしいけど,当時のロシアはオペラで言うところのプリマドンナオペラと同じように,バレエもプリマドンナの一言で曲の変更なんか当たり前の事だった.
極端な例が「海賊」一般的にはアダンの作曲と言われるけど,パリでマジリエが振り付けして,初演後すぐにアダンが死去.すぐにロシアでプティパ改訂上演.その後も改訂する度に曲が入れ替え,追加されて,計十人近い作曲家が手を加えている.主だったところでは,
- グルナーラが奴隷市場に連れて来られて,ランケデムと踊るPDDはオルテンブルク公作曲(一部ドリゴ)
- いわゆる「海賊のPDD」と言われる導入部のアダージオはドリゴ.コンラッド,メドーラのヴァリアシオンはそれぞれゲルベルとフティンホフ
- オダリスクのPDTはプーニ
- Le jardin animéはドリーブ.ただし,現行マリインスキーとマールイはグルナーラとメドーラのヴァリアシオンはそれぞれザベルとトルベツコイ
プーニなんかは作曲が早く,プティパやプリマドンナが少しでもためらうと,その場で書き直したらしい.
チャイコフスキーは他人に弄られるのが嫌だから変更が必要なら自分に言って欲しいと言ったらしい.
だからチャイコフスキーのバレエ曲には他人の筆は入っていないようだけど,ドリゴの忠告を受け入れて「眠り」のローズ・アダージオ導入部のハープカデンツァを付け足したりしている.話がそれるけど,このバレエの三幕にハープが使われていないのは,もしかするとドリゴに言われるまでハープを入れる予定はなかったのかも.
白鳥湖も曲は弄っていないようだけど,プティパには弄られている.- 黒鳥が三十二回転のフェッテを見せる曲は,本来は「村人の踊り」
- プティパがカットした曲をサルベージしてバランシンが振り付けたのが「チャイコフスキーPDD」
チャイコフスキーのバレエ曲は単独でも演奏される名曲なのに対して,プティパの信頼暑かったプーニ.ドリゴ,ミンクスはバレエ曲(それもピアノスコア)以外残っていないし,演奏会で演奏されるなんてあり得ない.
もっともラ・バヤデールの影の王国なんかは名曲だと思うけど.
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