久生十蘭のショートショート集に「いなか、の、じけん」というのがある.
大正末期から昭和初期に「田舎で起こった,都会では信じられない事件の数々」みたいな作品集.
ところがこれ,今でも通用するのよ.
10数年前「つくばエクスプレス」と言う新しい電車の路線ができた.
東京,埼玉,千葉,茨城の「陸の孤島」と言われた地域を走り,つくばまで走る路線.
当時,パンク寸前の常磐線のバイパスとして「常磐新線」と言われていた.
ところが運行を委託するはずだったJR東日本が「採算が採れる見込みが無いから受託できない」と手のひら返し.結局第三セクターでなんとか開業.
当時から最先端の科学都市であった筑波は人の交流が多く,東京駅のバスターミナルからは数分置きにつくばへの長距離バスが,ほぼ満席で出ていた.
で,結局つくばエクスプレスは「第三セクターでは前例のない乗車率」で増発続き.借金は多いものの,早い段階で「単年度黒字」が見込まれる有料路線に成長した.
ところがね,沿線住民の民度はそう簡単に変わらないの.
「川の恐ろしさを感じたわ」
流行は三ヶ月もあれば日本中を駆け抜けるけど,文化の速度は4km/年なのよ.しかも川があると渡るのに時間がかかる.
今では都内では嫌われるエスカレータの「Walk Right Stand Left」が利根川を超えるまで,つくばエクスプレスの開業から数年を要したし,結局つくばまではたどり着か無かったし,常磐線でも取手まではなんとか着いたものの,水戸には着けなかった.
このシステム,千代田線が開業して新御茶ノ水や国会議事堂前のように「長い長いエスカレータ」ができてから始まったと思うのだけど,江戸川渡るのに約20年かかった.
さらに利根川超えるのにまた20年近くかかった.
つくばエクスプレスはすべての駅にホームドアが有るのだけど,開業当時,田舎者が駅で待つ姿勢は「ホーム柵に寄り掛かってホームを覗き込む」のがデフォだったの.
恐ろしいでしょ?今でも結構見られるの.死人が出なかったのが不思議よ.
あと,エスカレータの降り口で立ち止まる.
これも後ろから来る人に蹴飛ばされたりで危ないでしょ?
こういった田舎者の不躾って中学高校性に多かったのよ.
都会の子供は小さな頃から電車に乗るマナーを徹底的に躾けられるけど,電車のない田舎は,そもそも親が電車に乗った経験少ないから.
「さっさと降りるとっとと乗る」も無理よ.
電車のドアが相手も誰も降りてこないから乗ろうとすると,多勢が降りてきたり,ドアが閉まる直前に降りたり.
沿線の高校の先生
「電車の乗り方教えてください」
皆様も20世紀が見たかったら「つくばエクスプレス」はおすすめです.
この路線,各駅の前に同じようなショッピングセンターがある.
母の日や父の日,子供が書いた絵の展示がある.その子供たちの名前のDQN度が,東京から離れるほどひどくなる.
都内→秀樹,埼玉→悠馬,千葉→宜蘭,茨城→金星(マーズ)みたいな.
ま,都心から離れるほど底辺化するから当たり前なのだけど.