2009年9月8日 南極料理人☆☆☆☆☆
いやーーーーー素晴らしい作品です.今年一番の作品でしょう.日本映画には,偶にこの手の「脱力系名作」が出ます.「アフタースクール」「ひゃくはち」「キサラギ」.それと肩を並べる傑作です.
元々が実話のエッセイだから,無駄な脚色はないし.
以前,「不肖宮嶋」が昭和基地やドーム富士を取材したときに書いてあったのと全く一緒.
「観測隊に必要なのは,どこでもクソをひることが出来る能力と女装」だとか.
昭和基地にはバーコーナーがあり「交代でママさんに扮して隊員を接待する.そのために各越冬隊が持ち込んだ女装用の衣装がたくさんある.」とかイレギュラーでママに任ぜられた隊員は「今日あたしなの?この間もやったじゃないの,アラ困ったわ」とかお姉さん言葉で言いながらも嬉々として化粧をする・・とかあったし,なぜか晴れ着姿のペコちゃん人形が・・・・・
その事実より,荷物を準備するところを想像して吹き出したことがありました.
「えーとTシャツに,靴下に,ダウンジャケット,それからストッキングと口紅」
「あなた今年の流行色はベージュよ」
あながち嘘じゃないと言うことがよく分かりました.この映画の中では医務室がバーになります.
内容はロバート・アルトマンの作品のように,細かいエピソードの羅列ですから,ストーリーなんかあってないがごとし.
二十年来の夢であった南極遠征を前に事故ってパーになった同僚に変わって南極越冬隊の調理担当を命じられた自衛隊員西村,渋々赴任して約1年半,7人の仲間と過ごします.
どいつもこいつもちょっと変!
気象学者の隊長は,「インスタントラーメンの在庫が尽きた」ことで半狂乱になる,雪氷学者は「素人」の西村にボーリングを手伝わせ,氷床からコアを抜き出すときに「落としたら弁償だからな」と脅す.氷河にかき氷のシロップでダイアモンドを書いて野球をする.
西村が「前の隊が残した伊勢エビが大量にある」といえば全員が「エビフライ」と答える.「伊勢エビなら他にも料理法があるでしょう?」と言っても「エビフライ」当てつけに巨大なエビフライを作って一人一尾を割り当てる.冬至には「ミッドウィンターデー」として最高級のフレンチを作る.
恐らく自衛隊の調理担当だから国賓級をもてなす最高級の料理から,サバイバル料理まで出来るのか,雪氷学者の「成分的には重曹で鹹水の代用が出来るはず」の一言で,ラーメンが無くてパニックの隊員たちに手打ち麺のラーメンを振る舞う.日本に残した女房や恋人と話せる唯一の手段,インマルサットの衛星電話は「730円/分」
そんな愉快でお馬鹿なエピソード満載で,なおかつ,日本映画にありがちな「お涙頂戴」や「根性物」の部分が全くない,本当に脱力系の映画です.
大好評上映中です,お近くの映画館へ急げ!
エンドクレジットもほのぼのします.お見逃し無く.
2 件のコメント:
いつも読んでたのしい、ためになるし、よくいってくださったわ、な文章ありがとうございます。
小さい時、クラスの子のおとうさんが、南極探検隊(どうしても、探検っていってしまいます)でした。
今月はバレエも行かないし(たいした公演ないし)、歌舞伎も幸四郎と染五郎だし、なんにも行かないので、ぜひ、行きたいと思います。
見て損はない作品です.ぜひとも見て下さい.
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