2009年1月11日 Metライブビュー タイス☆☆☆☆☆
まず,瞑想曲を弾いたコンマスのデヴィッド・チャンが物凄い名演奏でした.一番最後のボウイングにちょっと引っ掛かると事があったけど,とても綺麗に弾いてました.幕間のインタビューやカーテンコールにも出てました.さて,キリスト教徒ではないあたくしは,アナトール・フランスの原作なので,もしかしてタイスは「反キリスト教」の作品なのではないかと思ってしまいます.
音楽として聴いているときには違和感がないのですが,芝居としてみると,アタナエルが「タイスを破戒から救う」なんてのに,すでに「おまえ邪な気持ちもっているだろう」と思ってしまう邪な異教徒のあたくし.ニシアスの事を罵るのも「単なるジェラシーだろうが」と思ってしまう邪な異教徒のあたくし.
突然回心してしまうタイスにも????だし,タイスが神憑りになると反対にアタナエルはどんどん生臭くなる.
最後タイスが幻影を見ながら死んでいくところも,「ヲイヲイこれって狂乱の場?」と思ってしまう邪な異教徒のあたくし.
絶対アナトール・フランスはキリスト教をおちょくるために書いている思うわ.
ルルドの泉へ行って「なんだ義足は一つもないのか」と言ったフランスですから.
で,音楽的には,ロペス・コボスの指揮は非常にバランスが良く,おフランス的に響いていたし,フレミング,ハンプソンのコンビも素晴らしい声でした.特にフレミングはソットヴォーチェが実にきれいでした.タイスにはちょっと暗めの声かもしれないけど,声の表現力は素晴らしいです.マスネーの音楽はとにかくきれいですね.
一方で,演技はと言うと,ハンプソンは良いけれど,フレミングは終始ニコニコと美しく,砂漠を延々と歩いた果てに修道院に入るときも,全然やつれてない.
さて,休憩時間の前後にバックステージが映るのですが,メトの舞台って多面じゃないの?
バックステージ自体はかなり広そうだけど,場面変換も力業だし,新国みたいに主舞台沈めて奥舞台使うみたいな展開は一つもありませんでした.これは昨年見た「ラ・ボエーム」も「連隊の娘」もそうだったけど.
相変わらずカメラワークが最悪です.レールで走るカメラを多用しているのだけど,妙なタイミングで動くから見にくい見にくい.
でも,最新のメトのプロダクションが僅か3500円で,NYとほぼ同時期に日本のシネコンで見られるなんて素晴らしいと思います.
まして,タイスなんかなかなか日本では見られないし.
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